その日の私は凄く上機嫌だった。
期末試験が終わり、友だちとの打ち上げから帰ってきた夜の日のことだった。
試験が終わった開放感と翌日からの長い夏休みを思うと、ついついお酒が進んでしまった。
酷く酔っぱらっていたが、汗をかいていてこのまま寝るのは気持ち悪い。
とうに日付は変わっていたが、近所迷惑も考えずにシャワーに入ることにした。
シャワーに入った直後のことだ。
リビングから何か音が聞こえる。スマホが鳴っているのだ。
そういえば、財布を忘れていった友達がいて私が預かっていたのだ。連絡するのを忘れていた。
彼女も家に帰ってから気が付いて、電話をしてきたのかもしれない。
早く教えてあげなければ。
そう思い、風呂場の扉を開けた瞬間、電話は鳴り止んだ。
タイミングが悪かったな。シャワーから上がったら連絡しておこう、蛇口をひねると再び電話が鳴った。
今度こそ出なければ、と再び風呂場の扉を開けるとすぐに電話は鳴り止んだ。
どうしてこうも間が悪いのだろうか、とシャワーを再開するとまた電話が鳴り始めた。
あがってからゆっくりと返事しようと、今度はそのままシャワーを続けた。
だが、一向に電話が鳴り止む気配がない。
気味が悪くなり、途中でシャワーを切り上げ風呂場の外に出てみたが、まだ電話は鳴り止まない。
身体を拭くことも早々に切り上げ、濡れたまま鳴り続けるスマホに近づいていった。
そして、スマホに手を伸ばした瞬間、電話は鳴り止んだ。
画面に写る電話番号を見ると、見たことがない番号だった。
急に怖くなってしまい、その日は友達の家に泊めてもらうことにした。
スマホは自宅に置いてきた。
翌朝、友だちと一緒に自宅に戻りスマホを見てみると、昨日と同じ番号から何十件も着信がきているではないか。
すぐに電話は解約し、家も引っ越した。
その後、同じことが起きることはなかった。
もし、あの時あの番号に折り返していたら、私はどうなっていたのだろうか。