どこかでカメラのシャッター音が聞こえて、男は思わず目を覚ました。それもそのはずだ。男は一人暮らしなのだから、そんな音が聞こえるわけがない。

変な夢でも見たのかと思い再び眠りにつこうとしたとき、今度はスマホからメッセージアプリの通知音が聞こえた。

普段からマナーモードにして音声を消しているのに不思議だなと思い、スマホに手を伸ばしてメッセージアプリを開いた。

その瞬間、男は恐怖に凍り付いた。その写真にはなんと男の寝ているところが撮られていたのだ。

繰り返すが、一人暮らしの男にそんな写真を撮る他の人などいない。
たちの悪いいたずらで、なにかの合成写真家と思い、写真を拡大してはなにか痕跡を見つけ出そうとした。

いや、見つけ出さないといけないのだ。そんな非科学的なことが起きるわけない。

目を皿のようにして写真を眺めていると、男はあるものを見つけて悲鳴を上げた。

ベッドの向こうにある窓から、見たこともない男が満面の笑みでこちらを覗いているのだ。

嫌悪感に恐怖、理解を超えた写真に混乱しながらも、まるで記憶から消すようにスマホから写真を消して部屋中の電気を消した。

こんな写真を見た後に寝れるわけがない。部屋の隅で震えながら朝まで過ごした。

憔悴しきっていたのだろう。いつの間にか男は眠ってしまっており、起きた時にはもう正午すぎだった。

上司から何回も着信があったが気づかなった。午後からでも会社に行った方がよいだろうかと思い、通知を見ていると、男が寝ている間にまたメッセージアプリに写真が届いていることに気づいた。

恐怖を感じながらも、なにが写っているかを確かめずにはいられず、写真を確認した。

写真は知らない部屋だった。そこには見たこともない女が寝ている。

これはいったい・・・?
この写真にもあの不気味な男が覗いているのだろうか?
なにか変なところはないか?

拡大しながら写真をくまなく探していると、壁に文字が書かれているのに気づいた。

「この女の部屋を見つけろ。さもなくば死ね」

文字の下には名前と住所。

すべてを察した。今から準備をすれば夜には間に合う。

男はこの日、生まれてはじめて会社を無断欠勤した。

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