10年前、私は車で大きな事故を起こしてしまい、死にかけたことがある。それは事実だ。
車は大破でその場で廃車が決定。事故を起こした私も入院6ヵ月という大事故だ。
幸いなことがあったとすれば、一命をとりとめたこと、他の誰も巻き込まなかったことくらいだろう。

今更になってこの事故のことを書き残そうと思ったには理由がある。
あの時に私に起きた不思議な、いや恐怖の出来事をまだ覚えているうちに残しておきたいのだ。

当時も、今までも家族や友人、警察にも話したし、事故現場に再び訪れた時もその時の痕跡を探したが全く見つからなかった。
医者が言うには事故を起こした時のショックで記憶が混濁しているのだという。でも私はそんなことを信じられない。

多少記憶が薄れたとしても10年経った今でもあの日の事は覚えている。

それなのに、私以外はそんなことがなかったと言い張っている。誰かがあの日の出来事を隠したがっているのではないだろうか。

そういえば、なぜ事故車は私の目に触れることもなく処分されたのだ?
再び事故現場を訪れた際には、あんな大きな事故があったにもかかわらず、事故の痕跡はまるで残っていなかった。

あの日以降、身体に不調を感じている。重体だったがゆえに、長時間の手術が必要だったと聞いているが、本当にそれだけが目的なのだろうか。
事故の瞬間は記憶がはっきりしているのに、その前後はまるでカスミがかかったかのように記憶があいまいだ。
記憶もいじられているのではないか?

だとしたら、誰が?
もしかして運転中のあの不思議な出来事が関係しているのか?
誰かがそのことを隠そうとしているのか?

そうであればつじつまが合うのではないか?
今更になってあの事故について告白しようと考えているのは実は自分自身がなにか洗脳を受けていて、それが解けつつあるのではないか?

もう一度、あの場所に行かないと。確かめないと。
あの出来事が本当に起きたのか・・・

–ある日、自身が起こした交通事故で無くなった人が携帯に残していた最後の独白。

–部屋には写真のようなメモが残されていた。携帯に残された内容と同じなのだろうか。それは彼しか知りえない……
–あの場所がどこを指しているかわからないが、彼の車は人里離れた山奥、ガードレールを突き破って転落しているのが見つかった……

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