彼女は毎朝、雪のように白い衣を纏いながら、屋敷の前を通り過ぎる。
忠実な犬を連れて、静かに散歩している。
夏が訪れると、彼女は麦わら帽子を被り、肩を露わにしたワンピースに身を包む。
その姿はまるで花のように優雅で気品が漂う。
その優雅さに影響を受けたように、小さな犬もどこか厳かな雰囲気だ。
そんな彼女が屋敷の前に立つと、いつも足を止め、2階の窓を凝視する。
彼女を見つめる私といつも目が合う。
それは一度や二度ではない。何度も何度も、私たちは見つめあってきた。
私は日々、彼女が通り過ぎるのを待ち続けているから、必然的に視線が交錯するのだ。
彼女の深紅の目は不思議で、見つめ続けるとまるでその奥底に吸い込まれてしまいそうだ。
白い衣から伸びた長い腕は、無数の切り傷から血を滴らせ、真紅に染まっている。
視線が交わるたび、彼女は何かを伝えようとしているのだろうか。
口を開けば、パクパクと音が響き、血があふれ出る様子が見て取れる。
そして、いつも彼女は突如として消えてしまう。
彼女がいた場所には、ただ赤い水たまりだけが残されるのだ。
彼女の在りし日の痕跡が、その赤い海と共に消えていくのだ。