私は躍動する自然と深い絆を持つ田舎の息吹を受けて生まれ育ちました。

その山々に囲まれた家は、静謐さと壮大さを同時に抱え込んでいました。

田んぼに挟まれた舗装のない道は、時折小さな草花が生い茂り、風に揺れる稲穂の響きが響き渡る、まさに田舎らしい風景でした。

 

ある夏の日、遊び疲れた私は友達と別れ、いつもの道を家に向かって歩いていました。

何度も通った道ではあったものの、その日は何かが違和感を感じました。

木々の葉がざわめき、微風が悪寒を運んでくるかのように感じられたのです。

 

そして、その違和感の正体が道端に転がっている手であることに私は気付きました。

道の縁から落ちていた右手は、生気を失ったようにうねり動き、闇の中で妖しく蠢いていました。

その光景に私の足は地に根を張り、全身が緊張に包まれたのです。

 

手は私に気づいたのだろうか、指先が私に向かって伸び、独特の響きで言葉を紡ぎました。

 

「私の体を知りませんか？」

 

その声は、風に運ばれる鳥の歌声のように美しく、同時に魂を揺さぶるものでした。

しかし、恐怖と不安が私の胸に広がり、言葉を発することがやっとでした。

 

「知りません」と私は小さな声で告げました。

 

しかし、その答えに怒りが混じるのを感じました。

声は荒々しく響き、闇の中に忍び寄るように拡散していきました。

私は混乱し、自らの言葉が果たす意味を再確認しなければならないと感じました。

 

「本当に知りませんか？」

 

彼女の声は深淵から湧き上がるように静まり返りました。

 

私は再び言葉を紡ぎました。

 

「私は知りません。どうしてあなたの体を知ることができるのですか？」