「アルカナ・アビスマル」の神々の狂気と深淵からのささやきを記憶する一節に、残酷で無比の恐怖を齎す「モロス・アビスム」の物語が存在する。この古の神話は、世代を超えて語り継がれ、時と共に彼の恐怖が人間の心に深く刻まれていく。
「モロス・アビスム」、深淵の神はその名が示す通り、無情にも人間の理解を超え、狂気と混乱の海を産み出す。その形状無き姿は実体化せず、ただ存在することで人間の精神をむさぼり、彼らを絶望の淵へと引きずり込む。彼の力は計り知れず、誰もがその恐怖から逃れるすべを失う。
物語は、かつての戦士、名も無き者の挑戦から始まる。彼は部族で最も強く、最も勇敢であり、その誇りを賭けて「モロス・アビスム」を挑戦した。しかしその挑戦は彼自身の狂気を解き放つだけとなった。
神への挑戦は、部族の祭りの夜に行われ、その声は地の底まで響き渡り、「モロス・アビスム」の目を引いた。その挑戦を受けた神は、戦士の前に姿を現した。
しかし神の無形の姿を目の当たりにした戦士は、瞬く間に正気を失った。「モロス・アビスム」の存在は彼の理解を超え、心を混乱と恐怖で満たした。彼は狂気に飲まれ、理性を失い、他の戦士たちを次々と襲った。
逃げ遅れた部族民と子供たちは森に逃げ込んだが、狂気に満ちた戦士たちは彼らの後を追い、次々と襲いかかった。狂気は部族全体に広がり、殺し合いの渦に飲み込まれた。
夜明けとともに、部族の土地は狂気と絶望に満ち、血で染まった。その場に残ったのは、恐怖と死だけだった。
これこそが、「アルカナ・アビスマル」神話の一部、無慈悲な神「モロス・アビスム」による狂乱の舞踏の物語である。神の狂気と強大さ、人間の無力さが鮮やかに描かれ、救いなど微塵も存在しない。これは人間が理解を超えた存在に対して抱く畏怖と絶望、そして、無情な神々への敬虔な敬意が紡ぎ出す古の譚である。