戦前の名残を留める古い病院地に新たに建てられた現代の大学病院。そこには黒髪の美しい看護師、葵の名前が残っていた。葵はその優れた技術と癒やしの笑顔で、数多くの患者たちを安心させていた。しかし、戦争の終わりと共に彼女は突如姿を消し、その存在はあたかも幻のように消えてしまった。
しかし、時間は流れ現代へと移り変わり、病院内では語られてはならない闇がうごめき始めた。何を患って入院したかを忘れ、葵という名前に依存してしまった患者たちが現れ始めたのだ。葵に触れられたい、葵がいなければ生きられないと、患者たちはその名を呼びながら全身を包帯で覆う。
そして葵がいない現実に耐え切れなくなった彼らは、自分自身の手で全身を包帯で覆い始める。その姿はまるで、葵が病院に現れて患者に包帯をまいているかのようにも見えた。その様子は次第に病院全体に広がり、あたかも葵が病院内をさまよい歩き、患者たちに包帯を巻いているかのような錯覚を与える。
患者たちの依存心が高まるごとに、恐怖は一層深まる。彼らの間からは絶望の声が漏れ、静かな廊下には闇が深まるばかりだった。葵の名を口にした患者は次々と全身を包帯で覆う姿へと変貌し、その姿はまるで生きる力を完全に奪われたかのように見えた。生きる希望を完全に奪われ、葵の影に依存するしかなかった彼らの姿は、畏怖すら感じさせた。
深夜の病院内で、廊下を歩く者たちの耳には葵の声が聞こえ、「あなたの傷は私が治します。私の包帯はあなたを守ります。心配しないでください」。その声に誘われ、患者たちは自らの全身を包帯で覆い始める。自分の全身が包帯で覆われ、葵の名を呼ぶことしかできなくなった彼らの姿は、この大学病院の内部に広がる絶望感を一層高めた。
この恐怖の伝説は、看護師・葵が病院内で彷徨っているという説と共に、人々の間で囁かれる。葵がいない現実を受け入れられず、自らを包帯で覆うことしかできなくなった患者たち。彼らの姿は、葵に対する深い依存心と恐怖、そして絶望が描き出された、背筋が凍るような恐怖の物語となっている。今も続くその恐怖の伝説は、この大学病院の闇を描き出し、人々の心を揺さぶり続けている。