夜の街を歩いていると、後ろから何かがついてくるような気配がしました。振り向くと、白い目をした男がいました。その時、友人から聞いた不気味な噂話を思い出しました。『白い目の男』という男が、後ろからつけてくるという話です。目的地までついてくると、不吉なことが起こるとか。噂話なら信じる必要はないと思いながらも、不安を感じ始めました。
しかし、どれだけ歩いても男は一定の距離を保ってついてくるのです。不気味な静けさが漂い、周りの騒がしさも聞こえなくなりました。私は心底怖くなり、急いで歩き始めましたが、男は私に近づいてくるばかりです。
『逃げろ!』という自分の声が聞こえましたが、足がすくんでしまいました。すると、急に男は私を追いかけてきました。恐怖のあまり、私はパニックになり思わず走り出しました。必死で逃げていると、何かにぶつかって転びました。追いつかれると思い、恐怖に慄きながらも振り返ると、そこには白い目の男はいませんでした。
冷静さを取り戻した私は、その話をしてくれた友人に連絡し、ことの顛末を伝えました。友人は安心したように「良かった」とつぶやき、話をつづけました。
「男に追われたまま目的地までついてしまうとそいつもまた、白い目になってしまい、誰かをつかまえるまでは必死に誰かを追い回すようになるんだって。でも途中で白い目の男は目がよくないので、目の前から追ってる獲物が見えなくなると混乱して帰るみたい。転んだのはラッキーだったね」
自分の幸運に感謝しながらも、あの日以来、誰かが後ろで歩くたびに振り返って立ち止まってしまう。追われるのがダメなのだ。
今日もどこかであの男は獲物を探し歩いているのだろうか。
獲物を捕まえるとあの男はどうなるのだろうか。二度と会いたくはないが、どうしても考えずにはいられない。