犬を飼い始めたとき、ペットショップの店員から不気味な話を聞いた。
「深夜に公園を散歩させないでくださいね」
それを聞いたとき、不思議な思いがした。言われなくても深夜に犬の散歩なんかするはずがない。
なぜそんなことを言うのだろうか?
「深夜に犬の散歩なんかするわけないじゃないですか。どうして、わざわざそんなことを注意するんですか?」と笑いながら質問すると、店員は真面目な顔で答えた。
「はい、それは分かっています。ただ、万が一を考えて・・・」
「どういうことですか?」
「噂があるんです。深夜に犬が地面に刺さった包丁を見つけてしまうと、次の日に原因不明の病気にかかってしまうというものです。なんでも、犬嫌いの呪い士が日本のいたるところに呪いをかけた包丁を地面に刺したのだとか」
「面白い話ですね。気を付けます。でも、地面に包丁が刺さっているなんてありえますか?」
「そうですよね。変な話をしてしまい申し訳ございませんでした」
変な話だと聞き流し、それ以降ずっと忘れていた。
ただ、今日ふとその話を思い出した。
目の前に地面に刺さった包丁があるのだ。
なぜだか分からないが、今が昼間で本当に良かったと安堵した。