金曜日ということもあり、つい飲みすぎてしまった。すっかり深夜となり静まりかえった住宅街で私はアレと出会ったしまったのです。すれ違う人もいないような暗闇の中で、物語から飛び出してきたかのようなピエロが立っていました。
不気味に思った私は関わらないように、なるべく距離をとって道の端を歩きましたが、ピエロはこちらに近づいてきてメモを手渡してきました。
機械で作ったかような、聞き取りにくい曇った声でピエロは「あなたがこれを落としたと思います」と言い、無理やりメモを押し付け、その後、闇に消えていきました。
恐怖を覚えた私は駆け足で家に帰り、部屋中の電気をつけてあいつがついてきてないことを確認して安堵したことを覚えています。しかし、メモを見た私は再度恐怖におののくことになるのです。
なんと、メモには私の名前が書かれていました。名前の下にたった一文、「不吉な運命に繋がる」と書かれていました。
その後、私の周りで不幸な出来事におき始めました。仕事中に机の上にあるメモが突然消えたり、財布を落としたり、運転中に事故に巻き込まれるなど。
最初はあんな手紙なんて信じていなかったが、こうも不幸な出来事が続くとピエロの手紙が本当のことのように思えてきた。
いつまでこんな事が続くのだろうと落ち込んでいると、SNSでこんな投稿を見つけた。
要約すると、ピエロの姿をした男から手紙をもらった友人がなくなった。なくなる前、友人はあの手紙だ。あの手紙のせいだとしきりにもらしていたという内容だ。
目を疑った。私も同じようになってしまうのだろうか・・・
友人に相談してもピエロはただのいたずらで、最近の出来事とは関係ない。仕事のミスや財布を落としたこと、車の事故も不幸な偶然だと励ましてくれた。
しかし、どうしても私の気ははれなかった。呪いなんかこの世にあるのだろうか。
いつ襲ってくるかもわからない不幸な出来事に怯えた、憂鬱な日々を過ごしていた私のもとに、またあのピエロが現れた。
思わず叫びそうになるのを抑えて、ピエロを問い詰めようとした矢先、ピエロが口を開いた。
「もう大丈夫だ。すべて終わった」
予想外のピエロの言葉に、なにが大丈夫なのか、なにが終わったのかを聞くことも忘れて呆然と立ち尽くしていた。
ピエロはその一言を伝えて満足したのか、再び闇に消えていった。
その後、不幸な出来事が起きることはなくなった。
やはり、あのピエロの手紙は呪いだったに違いない。だが、そんなことをできるあのピエロはいったい何者なのだろうか・・・